死なないで
海汰が眠ったあと、リビングへ向かった。

さっき見た光景は夢ではなかった。

父の顔は少し微笑んでいるように見えた。

あちらで、母に会えたのだろうか。

そっと父に触れると、少しだけ温かかった。

「お父さん」

「ごめんな」

声は聞こえなかったけど父の口元がそう動いた気がした。

そのまま、父はどんどん冷たくなっていった。

用具入れから、スコップを取り出してきて、庭に大きな穴を掘ることにした。

誰にも見つかってはいけないと思い、裏庭に穴を掘った。

その後、死んだ父を引きずって運び、穴の中に埋めた。

絶対に誰にも言わない。

そう決めた。

リビングに戻り、血で汚れた床を綺麗に掃除した。

ふと机の上を見ると、父の字で書かれたメモが置かれていた。

『明那へ
今の俺を見たらきっと君は怒るでしょうね。要と海汰を連れて、君のもとへ向かうことをどうか許して欲しい。要を見ると、君と重ねてしまう。海汰を見ると、君を殺した殺人犯に見えてしまう。2人を君と同じくらい愛したいと思っています。でも、出来なかった。弱い俺を許してください。もうすぐ、会いにゆきます。
要と海汰へ
2人の人生をめちゃくちゃにしてすまない。2人のいい父親にはなれなかった。それでも、君たちのことが嫌いだったわけではないんだ。ただ、お父さんが弱かっただけなんだ。もし、生まれ変わってまたお父さんの子供になってくれたら、何があっても今度こそ君たちを愛するよ。一緒に行こう。』
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