死なないで
涙が溢れてきた。

僕だって、父を嫌いになれなかった。

でも、父より海汰の方が大切なのだ。

メモを握って裏庭に出た。

手でもう一度地面を掘り返し、メモを埋めた。

「お父さんは、海汰のために最低な人でいてよ」

何度も、父を埋めた地面を叩いた。

夕方になりやっと海汰は起きてきた。

「海汰。花の種を買いに行こう」

起きたばかりの海汰を着替えさせ、手を引いて買い物に行った。

「なんの花買うの?」

海汰が楽しそうに聞いてきた。

「なんでもいいよ。海汰が好きなの選んで」

海汰が選んだ花の種を買い、家に帰った。

「俺も植えたい」

駄々をこねる、海汰を宥めながら花の種を父の上に植えた。

最後の父への愛情だった。

「ねぇ、お兄ちゃん。お父さん僕が殺しちゃったから怒ってるかな?」

海汰が泣きそうな顔をしていた。

「海汰、お父さんのこと嫌いじゃないの?」

「どうして?大好きだよ。たまにね、よしよししてくれるもん」

そんなの本当にたまにだ。

どうして好きになれるのだろう。

「お父さんは遠くに行ったけど、きっと怒ってないよ。だって、海汰は悪いことしてないから。海汰がお父さんを刺したのは悪いことじゃないから」

そっと海汰の手を握った。

「行こう」

ここに全部を置いていく。

父も、母も、大きな秘密も。
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