死なないで
紗夜に、言われるままに、海汰を追いかけた。

しばらく走って、蹲っている海汰を見つけた。

「海汰!」

走って駆け寄った。

「ごめんね。海汰」

海汰がこちらを向いた。

「俺さ、本当は気づいてたよ。お兄ちゃんが間違ってたって。気づいてても、お兄ちゃんのことを信じて生きてきた。なんでか分かる?」

海汰が僕の服を握った。

その手に、自分の手を重ねた。

いつの間にか、海汰の手は自分よりも大きくなっていた。

「復讐だよ!人殺しの俺を置いて、普通に聞いてこうとしたお兄ちゃんへの!」

海汰は泣いていた。

「お兄ちゃんが困ればいいと思った。俺が本当に人を殺して、お兄ちゃんが死ぬほど後悔すればいいと思った。ずっとね、何度も誰かを殺そうとしたんだよ。でも、」

海汰が俯いた。

「出来なかった」

しぼり出したような声だった。

「父さんが、死ぬ前に俺になんて言ったかわかる?」

僕は黙って首を振った。

「ごめんなって。こんなことさせてごめんなって。父さん以外を殺しちゃダメだぞって。その間、お兄ちゃんは寝てたよね。何も気が付かずに」

「ごめん。ごめんね」

「どうして、高校生になっていた俺を置いて施設を出たの?」

海汰をしっかりと抱きしめた。

「海汰、あの時俺にべったりだったでしょ。海汰は学校にも行ってなかったから。このままじゃだめだって思ったんだ。海汰に1人でも生きていけるようになって欲しかった。それが、逆に海汰を苦しめたんだね。ごめんね」

海汰が声を上げて泣いた。

「ごめん、ごめん」

何度もそう言って、海汰を抱きしめ続けた。
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