死なないで
2010年
小学生になる前の記憶はまばらだ。
それでも、父がまだ優しかった頃の記憶はうっすらと残っている。
海汰が生まれて、母が亡くなってから父は変わってしまった。
海汰を出産した時に、母は亡くなったのだと聞いた。
それから父は海汰を恨み、虐待するようになった。
海汰が小学生に上がるまでは、父の母、僕らのおばあちゃんがいたからまだ良かった。
でも、おばあちゃんが亡くなり、海汰を守れるのは僕だけになった。父は僕にだけは少し優しい。
それでも、僕にも暴力を振るう時が沢山あった。
海汰はそれ以上に、いつも暴力を受けていた。
「お兄ちゃん。どこ行くの?」
学校に向かおうと、靴を履いていると海汰が話しかけてきた。
まだ起きたばかりのようで、眠そうにしていた。
「学校だよ。いい子に待ってて」
そっと、海汰の顔の痣を撫でた。
「早く帰ってきてね」
「うん」
学校に行ったままもう家に帰りたくないと思ったことが何度もあった。
それでも、海汰がいるから、ぐっと堪えて毎日家へ帰った。
本当は海汰も小学校に通う年齢になっているけど、父は海汰にランドセルを買わなかった。
学費も、僕の分しか払ってくれなかった。
児童相談所の人が、海汰を学校に行かせろと言いにやって来ては、父が怒鳴って追い返すことがよくあった。
小学生になる前の記憶はまばらだ。
それでも、父がまだ優しかった頃の記憶はうっすらと残っている。
海汰が生まれて、母が亡くなってから父は変わってしまった。
海汰を出産した時に、母は亡くなったのだと聞いた。
それから父は海汰を恨み、虐待するようになった。
海汰が小学生に上がるまでは、父の母、僕らのおばあちゃんがいたからまだ良かった。
でも、おばあちゃんが亡くなり、海汰を守れるのは僕だけになった。父は僕にだけは少し優しい。
それでも、僕にも暴力を振るう時が沢山あった。
海汰はそれ以上に、いつも暴力を受けていた。
「お兄ちゃん。どこ行くの?」
学校に向かおうと、靴を履いていると海汰が話しかけてきた。
まだ起きたばかりのようで、眠そうにしていた。
「学校だよ。いい子に待ってて」
そっと、海汰の顔の痣を撫でた。
「早く帰ってきてね」
「うん」
学校に行ったままもう家に帰りたくないと思ったことが何度もあった。
それでも、海汰がいるから、ぐっと堪えて毎日家へ帰った。
本当は海汰も小学校に通う年齢になっているけど、父は海汰にランドセルを買わなかった。
学費も、僕の分しか払ってくれなかった。
児童相談所の人が、海汰を学校に行かせろと言いにやって来ては、父が怒鳴って追い返すことがよくあった。