死なないで
「ただいま」

学校が終わり、玄関を開けると、父の靴があった。

父はいつも、僕より先に出て仕事に行き、あとから帰ってくる。

今日は違ったらしい。

「お前なんか、生まれなきゃ良かったんだよ!」

リビングから父の怒声が響き、海汰の鳴き声が聞こえてきた。

リビングへの扉を開けると、頭から血を流した海汰が大泣きしながら座り込んでいた。

「泣くな!うるさいんだよ!」

父が腕を振り上げた。

「お父さん、やめて」

背負っていたランドセルを投げ捨て、父の腕を掴んだ。

「明那(あきな)」

父は、僕の顔を見つめ、母の名前を呼んだ。

僕は、母に似ているらしい。

父は泣きながら僕を抱きしめた。

「要、要。ごめんな」

父の静かな泣き声と、海汰の大きな泣き声が家中に響いた。

「泣かないで」

そう言って、僕も泣いていた。
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