忘れないまま恋をした
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大学の正門をくぐった瞬間、胸がきゅっと締めつけられた。

満開の桜。
新しいスーツ。
行き交う、知らない笑顔。

みんな“これから”を生きている顔をしている。

私も、その中のひとりのふりをする。

「柚〜!」

振り向けば、美優が大きく手を振っていた。

「おはよ!緊張してる?」

「ちょっとね」

私は笑う。
ちゃんと、普通の18歳の顔で。

──ここは、彼が合格した大学。

颯斗が、通うはずだった場所。

「柚も来いよ。一緒にキャンパス歩こうな」

あの約束だけを握りしめて、私は勉強した。
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