忘れないまま恋をした
そのあと、直哉がゆっくり言った。

「最低じゃないよ」

即答だった。

私は首を振る。

「最低だよ」

「颯斗いるのに」

名前を出した瞬間、胸が締めつけられる。

でも止まらない。

「私、まだ奥さんのつもりなのに」

「なのに直哉のことで泣いてる」

ぐちゃぐちゃだ。

自分が誰なのかもわからない。

「こんなの…」

「颯斗に失礼」

そう言った瞬間、

直哉の声が少し強くなった。

「それは違う」

初めてだった。

直哉が、はっきり否定したのは。

私は顔を上げる。
< 107 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop