忘れないまま恋をした
8
四年生は、現実が押し寄せる。

説明会。エントリーシート。面接。

「将来のビジョンを書いてください」

その一文で、手が止まった。

将来。家族。結婚。

まだ少し、怖い言葉。

不安で泣きそうになる日もあった。

就活帰り、疲れた顔で並んで歩く。

恋人じゃない。

でも、一番に報告したい相手。

直哉は言う。

「柚なら大丈夫だろ」

強く言うわけでもなく、ただ当たり前みたいに。

その顔を見ていると、少しだけ勇気が出た。
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