忘れないまま恋をした

線香の匂い。

読経の声が静かに響いている。

私は膝の上で手を重ねていた。

少しだけ緊張している。

隣には、直哉がいた。

スーツ姿で、

背筋を伸ばして座っている。

来る前、

「俺いていいのか?」

って聞いてきた。

私はうなずいた。

「いてほしい」

それだけ言った。
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