忘れないまま恋をした
直哉のお母さんは少しだけ目を細めた。

それから言う。

「それで十分よ」

静かな声。

「人の人生ってね」

少し笑う。

「まっすぐじゃないもの」

それから、

一番静かな声で言った。

「大丈夫」

少し間。

「あなたが幸せになることを、誰も怒ったりしないわ」

その言葉で、

胸の奥にあった何かがほどけた。
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