忘れないまま恋をした
私はそっと、直哉の手を握る。

今度は自分から。

震えない。

罪悪感も、吐き気もない。

ただ、あたたかい。

愛は上書きじゃなかった。

消えなかった。

増えて、形を変えて、今ここにある。

空を見上げる。

心の中で、静かにつぶやく。

――ちゃんと、生きてるよ。

隣にいる人を、大事にしてるよ。

きっと、どこかで笑ってる。

そんな気がする春だった。

私はもう、探していない。

探さなくても、

今は、隣にいるから。
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