忘れないまま恋をした

病院の小さな病室。

そこに、両家の親が集まっていた。

難しい手続きとか、法律の話とか。

私はほとんど覚えていない。

ただ一つだけ覚えている。

颯斗が、少し照れながら言った言葉。

「柚、よろしく」

それだけだった。

指輪もない。

ドレスもない。


でも、確かに家族になった。

婚姻届に名前を書く手が震えた。

“佐藤柚”

何度も心の中でつぶやく。

私は世界で一番幸せだった。
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