忘れないまま恋をした
直哉と笑った。

本当に、それだけ。

たったそれだけなのに、
夜になると吐きそうになった。

颯斗の前に座る。

「ごめん…」

笑っただけ。
楽しかっただけ。

でも――

“少し楽だった”

その事実が、いちばん許せなかった。

私はまだ、佐藤柚のままなのに。

颯斗の奥さんのままなのに。

楽になる資格なんて、ない気がした。
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