忘れないまま恋をした
ゼミの帰り。

友達が笑いながら言った。

「ていうかさ、直哉と付き合ってるんでしょ?」

反射で答える。

「違うよ」

隣で直哉も同時に言う。

「ないない」

空気は軽い。

冗談みたいに笑う。

でも。

“違う”と言うたび、胸の奥が少し痛む。

帰り道。

沈黙が長くなる。

「否定、早かったな」

直哉が苦笑する。

「だって違うし」

そう言い切る自分の声が、少しだけ冷たい。

名前がついたら、壊れる気がする。

だから、つけない。
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