冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~
「――見つかったぞ。王宮通行証だ。ロイドの署名がある」
暫くして、ルーメンは二人の元へ現れた。
ユリアンの言う通り、女は王宮通行証を持っていたのだ。
「所持品から身分も分かるだろう……」
遺体を検閲した手は泥か血か分からないが汚れていたが、ヒストリアは気にせずルーメンが差し出したハンカチを受け取った。
見ればそれは家紋が入ったもので、新興貴族の男爵家のものとして薄っすらと覚えがあった。
「ベルナルド王太子の元へ急ぐぞ」
「……待って。死体はどうやって持って行くの?」
性急に告げるルーメンにヒストリアは手を掴み訊いた。
遺体の損傷は激しい。まさかこのまま運ぶとでも言うのか。
「氷漬けにしてユリアンに運んでもらおう」
「そんなこと出来るの……?」
振り返りユリアンを見れば、その表情は少し血の気を取り戻しており、声を和らげ頷いた。
「大丈夫だよ」
姿を変え、吐息を吐くと遺体を起点にその奥の一帯が氷漬けになっていた。
空を滑空出来ることに驚いていたヒストリアだったが、氷結された遺体にさらに言葉を失った。
再び元の姿に戻ったユリアンにルーメンは頷くとヒストリアに向き直る。
「変身魔法の真価は擬態した対象の力を使うことだ。ドラゴンと同じことがユリアンにもできる」
信じられない現象はルーメンで見てきたが、やはり驚きは隠せずヒストリアは感心した。
「ただし生態を熟知している必要があるがな」
「ルーメンの魔法と原理は同じね……」
「あぁ。俺とユリアンの魔法の精度は”構造の理解”から始まるからな。そういった魔法は攻撃性も高いが扱いが難しい。だが、ユリアンは根気よく覚えていたな」
ルーメンが魔法で植物を網状し、それを氷の遺体にかけながら告げた。
どうやら袋のように入れて運ぶようにするらしい。
「へへ。ルーメンが教えてくれたんだよ。私のためになるからって、話して聞かせてくれて……ずっと憧れてたドラゴンにもなれるようになったの」
確かルーメンはユリアン達と共に旅をしていた時期があると言っていた。
その時のことなのだろう。
ルーメンはヒストリアにもよく薬草について語って聞かせてくれた。
第一印象は冷たい男、といった感じだったが、ルーメンはきっと世話焼き好きなのかもしれない。
「ユリアンはドラゴンが好きなの?」
「うん。大好き。逞しくて、嗅覚がとても鋭いの。それにカッコいいでしょう?」
どうやらドラゴンには思い入れがある様子だった。
「えぇ。慈悲深い生き物って本で読んだことがあるけれど本当なの?」
「本当だよ。ドラゴンはね、子供を大切にして、ぜったいに仲間の匂いを忘れない……私の親も、私達を村の人から守ってくれた。今は離れてるけど…….私も家族の匂いを忘れない」
そこには強い意志を感じる瞳があった。
「……きっと戻れるわ。まずはアリアを取り戻しましょう、あなた達は自由になるのよ」
「うん。絶対に助け出してみせる」
ユリアンは深く頷いた。
それから網の点検を終えたルーメンの姿に歩み寄りながら、一方でヒストリアは考えていた。
――ルーメンも、やはり元は普通の人間だったのだろうか。
魔法使いと呼ばれる存在が後天的に発生するのなら、きっとルーメンにもそれまでの人生があるはず。
ユリアン達のように失いたくない過去があったかもしれないのだ。
そう考えると不意に胸がざわついた。
暫くして、ルーメンは二人の元へ現れた。
ユリアンの言う通り、女は王宮通行証を持っていたのだ。
「所持品から身分も分かるだろう……」
遺体を検閲した手は泥か血か分からないが汚れていたが、ヒストリアは気にせずルーメンが差し出したハンカチを受け取った。
見ればそれは家紋が入ったもので、新興貴族の男爵家のものとして薄っすらと覚えがあった。
「ベルナルド王太子の元へ急ぐぞ」
「……待って。死体はどうやって持って行くの?」
性急に告げるルーメンにヒストリアは手を掴み訊いた。
遺体の損傷は激しい。まさかこのまま運ぶとでも言うのか。
「氷漬けにしてユリアンに運んでもらおう」
「そんなこと出来るの……?」
振り返りユリアンを見れば、その表情は少し血の気を取り戻しており、声を和らげ頷いた。
「大丈夫だよ」
姿を変え、吐息を吐くと遺体を起点にその奥の一帯が氷漬けになっていた。
空を滑空出来ることに驚いていたヒストリアだったが、氷結された遺体にさらに言葉を失った。
再び元の姿に戻ったユリアンにルーメンは頷くとヒストリアに向き直る。
「変身魔法の真価は擬態した対象の力を使うことだ。ドラゴンと同じことがユリアンにもできる」
信じられない現象はルーメンで見てきたが、やはり驚きは隠せずヒストリアは感心した。
「ただし生態を熟知している必要があるがな」
「ルーメンの魔法と原理は同じね……」
「あぁ。俺とユリアンの魔法の精度は”構造の理解”から始まるからな。そういった魔法は攻撃性も高いが扱いが難しい。だが、ユリアンは根気よく覚えていたな」
ルーメンが魔法で植物を網状し、それを氷の遺体にかけながら告げた。
どうやら袋のように入れて運ぶようにするらしい。
「へへ。ルーメンが教えてくれたんだよ。私のためになるからって、話して聞かせてくれて……ずっと憧れてたドラゴンにもなれるようになったの」
確かルーメンはユリアン達と共に旅をしていた時期があると言っていた。
その時のことなのだろう。
ルーメンはヒストリアにもよく薬草について語って聞かせてくれた。
第一印象は冷たい男、といった感じだったが、ルーメンはきっと世話焼き好きなのかもしれない。
「ユリアンはドラゴンが好きなの?」
「うん。大好き。逞しくて、嗅覚がとても鋭いの。それにカッコいいでしょう?」
どうやらドラゴンには思い入れがある様子だった。
「えぇ。慈悲深い生き物って本で読んだことがあるけれど本当なの?」
「本当だよ。ドラゴンはね、子供を大切にして、ぜったいに仲間の匂いを忘れない……私の親も、私達を村の人から守ってくれた。今は離れてるけど…….私も家族の匂いを忘れない」
そこには強い意志を感じる瞳があった。
「……きっと戻れるわ。まずはアリアを取り戻しましょう、あなた達は自由になるのよ」
「うん。絶対に助け出してみせる」
ユリアンは深く頷いた。
それから網の点検を終えたルーメンの姿に歩み寄りながら、一方でヒストリアは考えていた。
――ルーメンも、やはり元は普通の人間だったのだろうか。
魔法使いと呼ばれる存在が後天的に発生するのなら、きっとルーメンにもそれまでの人生があるはず。
ユリアン達のように失いたくない過去があったかもしれないのだ。
そう考えると不意に胸がざわついた。