冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~
目指すは鐘楼の最上階。
神殿の内部に向かうラキュウスらとは反対にレナードとゼノらとすれ違う。

ラキュウスは声を張り上げた。

「……あいつが魔法を使う時、青白く光る!注意しろ!」

天井の高い神殿内にそのまま侵入し、ラキュウスらは鐘楼に通じる螺旋階段まで馬を走らせた。

流石に階段は狭く、馬から降りて駆け上がっていく。

ユリアンとニッカには三度目の閃光弾が上がった時が、合流の合図と事前に打ち合わせてある。

最上階で閃光弾を打ち上げる予定だが、階段を駆け上がりながら小窓を見遣ると、青白い光と共に驚愕のものがラキュウスの目に映った。

魔法使いによって生み出されたであろう三つの首の獣。のようだが、それは人間の手足が組み合わさって出来ているように見える。

まさか仲間の兵や神殿騎士が使われているのか?

思わず立ち止まったラキュウスに先導していたベリルが声を荒げた。

「おい、なにしてる?」

「……あれはなんだ……実体があるのか……?」

ラキュウスの言葉に外を見たベリルは険しい表情を消して目を瞠った。
だが幾許もなく再び瞳に鋭い光を宿す。

「考えたくねぇな。さすがのあんたでも動揺するか……だが行くぞ」

「……あぁ。分かっている」

ラキュウスは頷いたが、しかしその表情は強張ったままだ。

「ラキュウス辺境伯。あの魔法使い、足止めまで出来りゃ上等だったが、あの様子じゃむしろ追い詰められるのはこっちかもしれねぇな」

納得せざるを得ない言葉にラキュウスは奥歯を軋ませた。
しかしベリルは前を見据えたまま続ける。

「だが、悲観することもない。落とし所次第じゃ互角だ」
「なに?」

仲間の身体を使った術を見て不快感の余韻が続く頭に、ベリルの言葉は上手く入ってこない。
思わず聞き返したラキュウスにベリルは走りながらこうも言う。

「そもそも魔法は無限なのかって話だよ」

「何を言い出す……?」

「年齢だ。あの爺さん、よく考えりゃいくらなんでもおかしいよな……エルバが滅んだのは最近じゃねぇだろ…」

唐突かつ根本的な問いに、ラキュウスはベリルの背に眇めた視線を向けた。

その話ならば実しやかな噂を耳にしたことがある。

「ユリアンが擬態だけでなく性質まで引き継げるように、応用がきくようだ。自分自身に魔法をかけて騙すことで本来の寿命以上に生き永らえていると聞いたことがある……今それが重要か?」

最上階へと辿り着き、横腹の軽い痺れを感じ息を切らしながらラキュウスが答えるとベリルは振り返り、同時に口端を緩めた。

「あぁ、重要だ。つまりそれでいくなら魔法を常に展開しているわけだろ?消耗してるはずだぜ。さっきの怪物がいい例だ。あんなもん出すよりも、あんたの兵が倒れたみてぇにすれば直ぐに片がつく……」

言われて、ハッとした。
ラキュウスは考えると同時に言葉に出していた。

「出来なかったということか……」
「魔法がどんなもんか知らねぇがな」

ベリルが閃光弾の残数を確認すると、すぐに空へと撃ち放った。

三発目の発射、ユリアン達を呼ぶ合図だ。

「確かに……効果の大きい魔法は負担が大きく、そう何度も打てない可能性はある……ルーメンも回復は必要だと言っていたな」

ベリルの言葉をきっかけにラキュウスはかつてルーメンが何気なく言った言葉を思い出した。
ラキュウスは再び外へ目をやった。

魔法使いは怪物を従え今もなお交戦しているが、レナードが連れていた兵士とスレイが倒れている。

今はまだゼノとレナードが持ち堪えているようだが時間の問題とも言えるだろう。

しかし冷静に見れば窮地であること以外にも見えてくるものがあった。

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