冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~
だが、窓の外の青空が一瞬だけ揺れたような気がした。
イクシスは瞳を瞬き、もう一度目を凝らして空を見る。

国中に張り巡る結界に揺らぎが起きている。
その異変に気付き、まさか……とイクシスは目を見開いた。

結界を使い浄化を試みているのか。

イクシスの記憶では、広域展開される結界の根幹をヒストリアが操れたことなどなかったはずだ。
聖印を持つ大聖女なら、誰でも容易に出来るという代物ではない。


暫くしたのち、荒々しく扉が開かれロイドが現れた。
背後には二人の魔法使いがいる。
背の高い冷たい蝋人形のような男と、王宮を離れていたはずの幻覚の魔法使い。

そして、いつもなら侍らせているはずのエリザベートの姿がなかった。

「――――シェリル王女。儀式の時間を少し遅らせるが、支度は滞りなく進めておくように」

部屋を見渡したのち、苛立ちを隠さずロイドは胡乱な眼差しを向けて告げた。

「それからイクシス様、あなたは念のため拘束させてもらう」

ロイド達の背後から更に神殿騎士らが手枷を持って現れる。

「そんなっ、……何か起きているの!?もしイクシス様に怪我をさせたら――」

シェリルが怪訝な表情で訴えるのを制し、イクシスは一歩前に出た。
実際に何か起き始めているのだ。

頭の回転は早いが本来の気性が荒いであろうロイドが背負う雰囲気は棘付いたものだった。

「……分かりました。一つだけ教えていただきたいのですが、エリザベートはどこに……?」
「はっ、あの糞女か。行けば分かる」

ロイドは顔を歪め吐き捨てるように言った。
つまりこれから軟禁する場所に居るということだ。

イクシスは短く顎を引くと、視線をシェリルに流したのちロイド達の元へ歩みよる。
それから洗脳されている魔法使いを見たあと、憂いを帯びた眼差しをロイドに向け告げた。

「……こんな風にしか人を信用できないまま、生きてきたのでしょうね」
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