妊娠しましたが相手に婚約者がいました。今更私が本命? ご冗談を。
呆れたような涼波社長に私は力が抜ける。私が骨の髄からヤクザの娘なら、今の発言で冬城組総出で涼波食品を襲撃するだろう。でも、彼は私が家を出て極道の世界から逃げたい女だと分かっていて侮辱している。
ここに逃げ込んでくるんじゃないと拒絶され、私の逃げ道は塞がってしまった。

「会社も辞めます。寮も出ます。早瀬ライさんとも二度と会いません」
私は深く頭を下げると涙が溢れる前に社長室を出た。

♢♢♢

あれから二ヶ月、私は鎌倉で人力車のバイトをしている。バイトなのに寮に住まわしてくれる福利厚生の整った良い職場だ。鎌倉の観光を案内しながら、色々な人と話せて楽しい。私の筋力と体力も活かせていた。

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