妊娠しましたが相手に婚約者がいました。今更私が本命? ご冗談を。
季節は桜が満開な春になっていた。人力車のバイトは繁忙期を迎えている。
大好きな仕事を失って、ずっと好きだった人ともお別れしたけれど私は何とか立ち直っていた。

「シンカちゃん、もう上がりだよね」
「はい、お疲れ様でした」

私を採用してくれた先輩俥夫の真島さんはこの道三十年のベテランだ。
アラフィフでも、テカテカでムキムキな体をしている彼はこの仕事が体力勝負だということを教えてくれた。

「それにしても、真夏と書いてシンカと呼ぶって、改めて凄いキラキラネームだね。シンカちゃん真面目なのに親はヤンキーなの?」

「そこそこヤンチャな親です」

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