あの日を越えて、二度目の初恋を~最愛の彼との再会愛~
 心臓が痛いほど締めつけられる。ゆっくり視線を合わせると、そこには記憶の中と変わらない端正な顔立ちの彼が立っていた。
 だけど、その瞳に宿っているものは三年前とは違っていて……。
 単に懐かしい後輩を見つけたというだけの、他人行儀な親愛だった。

「須南社長、このたびは新社長就任おめでとうございます」

 平静をよそおいながら挨拶を返すと、彼は少しだけとまどうような表情になった。

「それにしても懐かしい。こんなところで会うなんて驚いたな。元気そうでよかった」

 そう言って微笑む彼の顔に、かつて恋人に向けていた面影はどこにもない。

(……元気そうで、よかった?)

 その言葉が、私の胸をするどくえぐる。

 あなたが消えたあと、私がどれほど絶望の中にいたか、どれほど必死に生きてきたか……。
 この人はなにひとつわかっていない。
 恋人として過ごしたあの甘い半年間など、最初から存在しなかったみたいに平然としている。信じられない。

「私はこれで失礼します」

 彼の瞳をそれ以上見ていられなくて、私は深く一礼したあと逃げるように背を向けた。
 うしろから彼が声をかけてきていたけれど、振り返る心の余裕なんて持ち合わせていなかった。

 あなたは、私を切り捨てて去っていった元カレの康史(こうじ)とは違うと信じていたの。
 だから私は、あの幸せだった日々をなかったことにはできないの。

 これが私たちの再会だった。
 もう二度と、彼と会うことなんてないと思っていた。だけど……。
 
 止まっていた時計の針が、ついに三年ぶりに動き出す――。

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