あの日を越えて、二度目の初恋を~最愛の彼との再会愛~
 彼は平気で、私と〝キャリア〟を天秤にかけた。
 その上で私は、あっさりと切り捨てられる程度の重さしかなかったのだ。
 そう気づいた途端、心がひんやりと冷たくなって、彼とは一緒にいられないと思った。

「……わかった。もういい」

 絞り出すように小さくつぶやいた言葉を、彼は聞き逃さなかった。
 私が別れを承諾したとわかって、ホッと表情をゆるめたことに腹が立ってくる。
 
「凛音、今まで楽しかった。仕事がんばれよ」
「さよなら」

 震える声でそう答えるのが精一杯だった。
 私は嫌われたんじゃない。別れることになったのは、彼がキャリアを選んだからだ。
 そう思うのに、「ありがとう」という言葉はどうしても言えなかった。

 カタンと音がして視線を上げると、康史が椅子から立ち上がるのが見えた。
 まるで、私にもう用はないと主張しているみたいに動作が機敏だ。

 ――これで本当に終わりなんだね。
 
「じゃあ、元気でな」

 ひとこと声をかけ、彼は私の返事を待たずに立ち去っていった。足取りがあまりにも軽い。
 康史にしてみれば、〝ひとつタスクが片づいた〟くらいの気持ちなのかもしれない。
 そんな考えが浮かんで、じわじわと目のふちに涙が溜まってきた。
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