チョコレートフォンデュ
マンションの玄関を抜けると、豊が車の窓を開けてタバコを吸っているのが見えた。

小川さんに彼氏?と聞かれると、一瞬返事に困った私は、結局、友達です。と言って、買い物袋を持った小川さんを見送り車に乗り込んだ。


お待たせ。と言うと豊はちょっと不満げな顔でタバコの煙を窓の外に吐き、俺たちまだ友達なの?と聞き飽きた台詞投げかけてきた。豊は私の友達の彼氏だ。
私の友達というより、元友達なんだけど。

豊とは週一回こうやって会い、色々な所に出かけ、夜はお互いの欲求を満たした。

杏ってさぁっと豊が言った瞬間、次に何を言われるかが分かった。
タバコを吸い終わり両手でハンドルを握っているにも関わらず車を走らせる気配はなく、私の予想通りの言葉を発した豊を見て、うんざりした。

「杏ってさぁ・・・変わってるよな。」

よく人にも言われるから慣れているが、豊は口癖の様に会うたびに言ってくる。

そもそも私がこいつに本気になる理由はどこにもないのだ。

こいつは平気で女を裏切れる。親が金持ちだからバイトとかしなくてもなんでも手に入ってしまう。第一、私に本気で惚れている時点で私は受け付けない。

今の私になんの魅力を感じると言うのだろうか。

大学も中退し、特定の彼氏もいないでフラフラとしている。一応バイトはしているが家賃と携帯代を稼ぐ程度。服や食事代は、男が賄ってくれているから今の所問題はない。

こんなダメ女な私に、豊は本気で惚れているとなんとなく思う。
会う度にその気持ちが大きくなっているのが私にも伝わり、いつ終わりにしようか毎回考えてしまう。






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