チョコレートフォンデュ
男のプライド
火曜日。

いつもの様に接客用の笑顔を振り撒いていた私に、

「今日は彼氏来ないの?」

私は、ついうっかり、どっちのですかと答えそうになったが、

明らかに嫌みのその言葉に、愛想笑いで、

「さぁ・・」

と答えた。もっとも、豊もあっくんも彼氏ではない。

その人は私よりも一つだけ年が上の大学生で、いかにも理系っぽい感じの男だ。

私よりも一ヶ月早く入ったというだけで、初めから先輩面してきた奴で、週五回のバイトのうち、三回も顔を合わせなくてはいけない相手だった。

「中島さんってモテるよね。」

普段はこんな事聞いてこないのに、今日はやけにしつこい。

「そんな事ないですよ」

また愛想笑いで答えた。




80年代の雰囲気を意識したこの店は、小さいけど若い子達には結構人気で、雑誌などでもよく取り上げられるので、比較的忙しいのだが、今日はこんな無駄口を叩く暇がある程客が少なかった。
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