世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 まだ彩香は気にしているようだったけれど、私の意思を尊重してか手を振って駅のほうへ向かって行った。

 その背中を見送り、私も覚悟を決めて蓮司さんのもとへ向かおうと振り返る。

 と、いつの間にこちらまで来ていたのか、すぐ目の前に彼が立っていた。

 音もなく近づかれたうえ、普段はこんな距離で話すことなどないために、完全に思考停止してしまう。

「定時は十八時だと聞いていたが?」

 低い声は遅いと怒っているのかどうかすらわからないほど、抑揚がなく無感情だ。

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