買われた花嫁
「君の機嫌を取らなければ手に入れられないようなものを、俺ひとりで手に入れられないと思うのか? 舐められたものだな」

 一度は冷えた頭がまたかっと熱くなる。

「今日はもう帰りたいです。どうしてもバーに行くというなら、おひとりでどうぞ」

「いい。君を連れて行かなければ意味がない」

「私はあなたの思い通りにすることに意味を感じていませんけどね」

 どこまでも人の感情を逆撫でにする嫌な男に背を向け、車を止めている駐車場へまっすぐ歩き始める。

 政略結婚するにしても、もっと私にとって害のない人だったらよかったのに。たとえば五年前の……。

 また胸にむかむかしたものが込み上げ、顔をしかめる。

 蓮司さんのほうは振り返らなかった。
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