世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 実際、彼はどうして私がヒールを履いているのか、その理由を理解している。

「目的地に着く前に君が倒れれば、俺の時間が無駄になるとは考えなかったのか」

 吐き捨てられた言葉はどこまでも冷たい。

 私の体調を心配しているのではなく、あくまで自分の〝時間〟という資産の損失を懸念しているのだと、胃の奥が冷えるような感覚に包まれる。

「……すみません」

 それだけ言うのが精いっぱいだった。

 彼の言葉は正しい。わかっていても、責められるのはつらい。

 ふう、と息を吐く音が聞こえた。

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