世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 顔を上げられずにうつむいていると、手を差し出される。

「支えがあれば歩きやすくなるものなのか?」

 先ほどとは変わらない冷ややかな口調なのに、明らかに私への気遣いを感じた。

 予想外の言葉に動揺し、鼓動が速くなる。

「わ……わかりません。経験がないことなので……」

「歩かないほうが楽ならタクシーを呼ぶ」

「それがよさそうです、美術館まではまだ距離がありますし……」

「美術館へ向かうより、新しい靴を手に入れるほうが先だ」

< 216 / 489 >

この作品をシェア

pagetop