世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 だけど両親の前ですらうまく笑えなかった私が、もし本当に無防備な自分を曝け出していたのだとしたら……。

 再びスマホをバッグから取り出し、時刻を確認する。

 あと、八分。まだタクシーはぎりぎり間に合いそうだったけれど。

「もう少しだけ、ここにいたいです」

 絞り出すように、自分の気持ちを素直に告げる。

 差し出されたままだった手を取ると、蓮司さんの瞳がわずかに揺れた。

 その直後、力強く握り返される。

「帰りたくなったらいつでもそう言ってくれ」

「……はい」

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