世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 誘ったんだろうと私に迫り、無遠慮に触れてきたあの手を思い出すとぞっとする。

 蓮司さんが私に触れてくる時とはまったく違っていた。彼は私を壊れものでも扱うように慎重に触れ、時には指先ではなく唇で撫でる。

 ゆっくり息をして、重い気持ちごと吐き出した。

 気に入らない相手にワイングラスを投げつけたと噂されたようだけれど、真実は異なっている。あの時のようなことがまた起きなければいいと強く願った。

 かつては父が怒った。

 蓮司さんのことまで怒らせたくない。

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