世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 広いホールの片隅にひとり取り残された私は、手持ち無沙汰にシャンパングラスを握りしめた。

 指先が微かに震え、冷えたグラスの結露が肌を伝う。

 ちらちらと私に向けられる視線には気づいていた。歴史のある九条家の娘が、成り上がりの男に〝買われた〟ことへの剥き出しの好奇心と嘲りの眼差しだ。

 その視線に晒されるたび、古傷が疼くような錯覚に陥った。

 蓮司さんにも誤解されていた、まだ九条の家にいた頃のパーティーでの出来事だ。

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