買われた花嫁
 たったそれだけの返信を打つ指先が、熱を帯びて痺れる。

 蓮司さんを待つためだけに残業をして時間を潰していた。彼が到着するのなら、続きはまた明日でもかまわない。

 逸る気持ちを押さえて帰宅の準備をし、すぐにフロアを後にした。

 エレベーターを待つ間も、廊下を歩く間も、胸の鼓動は早まるばかり。

 彼に会える。

 その事実だけで、私の全身の細胞が、彼という存在を求めて疼き始めていた。



 会社を出てすぐ、ひんやりとした夜気が鋭く頬を叩いた。

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