世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 眼差しや雰囲気と寸分違わない印象を与える凍り付いた声は低く、艶がある。

 彼が映ったものをいくつか確認したけれど、今のような無表情ばかりで笑っているところはひとつもなかった。

 ふと、目が合う。

 私を映した瞳はやはり無感情で、これから妻にする女性に向けるものだとはとても思えない。

「一応確認しておくが、九条紗代で間違いないか」

 質問するなら軽く語尾を上げるなどして疑問を声にのせるものだろうに、彼はそうしない。そのせいでまるで尋問されているような気分になった。

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