Re:Romance
私の冤罪を証明して、罪を被ってくれた香椎に何をどう伝えていいのか。
とにかく何か伝えないとと思い、その背中を引き止めた。
「か、香椎。」
「なに?」
大きなその背中に救われてきた私。今回は上司として助けてもらったのだと、部下としてお礼を伝えることにした。
「あの……、あ、りがとうございました。」
適度に頭を下げて、ふと頭を上げれば。再び奥の壁へと押し付けられた。
「いっとくけど、俺は菩薩精神でお前を庇ったわけじゃねえからな。」
「え?」
「お前に恩でも売って、少しでも俺の付け入る隙を狙ってるだけだから。」
「は?」
「お前が実来心晴に堕ちてなきゃ、俺は親と縁切ってお前と一緒になる覚悟があるくらいお前に惚れてるってこと。」
「なぬ。」
「アホ面。」
香椎の大きな片手で、両頬をむにっと挟まれる。
顔を近づけられて、キスされると思いきゅっと目をつむれば。おでこにキスをされた。
「ちょ、」
戸惑う私を余所に、手だけでバイバイしながら給湯室を出て行った香椎。去り際に鼻で笑いやがった。
あれ? もしかして私、香椎にも踊らされてる??
私に会社を辞めさせないためにも、恩着せがましく香椎自ら罪を被ったのだとしたら。
いや、さすがに考えすぎか。
時間を置いて給湯室から出ていき、階段を下りようとしたところで足が止まる。踊り場では心晴君が待ち構えていた。
「香椎課長と何してたんです?」
どこから見られていたのだろう。
機嫌を取るためにも、ダーリンへの粋な計らいは忘れてはならない。
「こっはるくーん!今日のお昼暇かな?心晴君にお弁当作って来たんだよ私〜。」
腕を組み、適度な角度から上目遣いで先制攻撃する。
「ほらね? 香椎課長がいるから、僕は仕事辞めれば? って言ってるんですよ。」
心晴君が私の手を握って、ふてくされた顔で見てくる。会社という聖域でその顔は卑怯だよ。
「私は心晴君以外になびいたりしないよ。」
踊り場からみる窓の外には、真田さんと高市さんの姿があった。自販機の前で飲みながら、何か楽しそうに会話をしている。
いつの間に仲良くなったのだろう。