Re:Romance
ハワイアンダイナーで開催中の3対3の合コン。半個室のようなボックス席で、仕切りの代わりにレースのカーテンが垂れている。大人な雰囲気のあるカジュアルダイニング。
高市さんには、私が元モデルだってことは内緒にしてほしいと伝えてある。
退所してからもう7年は経っているのだ。一躍時の人ほど有名にもなれなかった私なのだから、知らない人の方が断然多い。
それがなんだ高市。どういうことだ。このメーカーマンがいる奇跡が神による人選だと言おうもんなら、私は明日から布教活動に乗り出そうと思う。
「で?なんで高市さんと叶恵さんの職場の男がここに来てるの?」
「初めましてこんばんは実来心晴です。近い将来、生意気にもムラノ自動車で働きたいと思っていまして、今日は先輩方からお話を聞けたらと思い参上たてまつったわけです。」
……そうでつか。
子会社から親会社への逆出向を狙っている話、今初めて聞きましたけど?
隣に座る高市さんに、「あれが間違えてのこのこやって来ちゃった年下男子ですか?」と聞けば、「間違えてはないです。実来君の意向を尊重しただけです。」とこっそり返ってきた。
「……はあ?」
「たまたま私が休憩室で電話してるのを聞かれちゃったんですよ。合コンするって話を。」
ああ、つまりムラノのメーカーマンと合コンする話を実来君に聞かれて、メーカーへの逆出向を狙っている実来君がこの合コンにやって来たと。掻いつまめばそういうことね。
一番奥の席でコナビールを飲みながら、流し目で実来君を見れば、通路側に座る実来君も同じように飲みながらこちらを睨む。
「来瞳凛花《くるめりんか》です。歩子《あゆこ》の高校時代の友達で、今は調剤薬局で薬剤師やってます!」
「へえ、薬剤師ってことは薬学部出身なんですか?」
「そうですー。」
異業種いいねえ、しかも白衣が眩しい薬剤師。話の幅を利かせて話をはずませていきなよ美少年。
「そういえばクラウスは新車製造ラインで中古車リノベーションに乗り出す計画があるそうですね、木叉《きまた》さん。」
美少年が隣に座るメーカーの木叉《きまた》さんに話を振った。来瞳ちゃんにとっては、ただでさえアウェイ感しかない空間なんだ。やめてやれ。
「旧車レストアはディーラーさんの仕事なんだけどね。クラウスに関してはレアな高級車だし、中古であっても最終組立工場から直接顧客に出荷すれば、特別感が増すでしょ?」
「でもディーラーとの製販分離がなくなりますよね?」
「まあうちの場合今はクラウスに関してだけだけど、転換期っちゃあ転換期なのかもね。」
「ですよね。いずれディーラーがいらない時代がくるわけですよね。だから僕はメーカーで働きたいなって思ってて。」
「うん、ディーラー社員の信念とか全くなくていいね。」
「合理的だと評価して頂ければこれ幸いです。」