Re:Romance


 高市さんが実来君の言葉に爆笑する。笑いのツボが浅すぎるので、私は失笑すらこぼさなかった。


「叶恵ちゃんはずっとディーラー勤務?転職とかはしてないの?」


 目の前に座る爽やかショートの五智川《こちかわ》さんが、取り分けてくれたガーリックシュリンプを私に渡しながら聞いた。


「えっと。短大卒業してから少し実家の食堂を手伝ってて、それから今の会社に入ったんですぅ!」

「へえ、実家食堂やってるんだ?洋食系?」

「いやオールマイティで、デカ盛メニューとかやってて!」

「え?デカ盛?!もしかして大食い動画サイトとかやってる人が来るの?」

「あ、前にカラマヨちゃん来て。7キロ完食してったんだけど、」


 私がスマホのフォトフォルダを開き、カラマヨちゃんがデカ盛り油淋鶏を食べている画像を五智川さんに見せた。


 私の姉、5人兄妹の次女がずっと実家の『芽組《めぐみ》食堂』を手伝っていて、その姉から送られてきた画像だ。因みに私は5人兄妹の可愛い末っ子。一番どうでもいいギャル。


 内輪《うちわ》の内輪差《ないりんさ》は激しいのだ。
 
 
「へえ〜ほんとにカラマヨちゃんだ!食堂はどこでやってるの?県内?」


 いい感じに話が途絶えず、五智川さんは私みたいな眼鏡でも拒否反応はなさそうだ。


 このままいけば中古車200台に漕ぎ着けるかもしんない!


「いや『芽組食堂』は隣の県で先祖代々やってる安くてそこそこの味を提供する37席の11時開店23時までやっている食堂で、昔は中華そばが有名で行列ができるほど地元民に愛されてましたよね。」


 ツラツラと、私を真顔で見ながら『芽組食堂』の歴史を語る実来心晴。


 彼の右手に持つフォークには、真ん中にブスリと刺したガーリックシュリンプがいらっしゃる。


 同じ高校なんだから知っていてもおかしくないだろう。ただ先祖代々とかどこ情報よ。 


「へえ〜。実来君、詳しいんだね。」


 五智川さんが実来君を見てから、コナビールで話の基軸を戻そうと流し込む。
 

 実来君は特に五智川さんに目をやるでもなく、私を細目で見つめながらガーリックシュリンプを口にした。油断してるとしっぽが歯ぐきに刺さるやつ。


「でもさ、叶恵ちゃんはそのデカ盛メニューは挑戦したことないの?」

  
 基軸が整ったらしい五智川さんが、再び興味深そうに私を見た。


「ないんだよなあ。私、同じものたくさん食べれないひ弱な胃腸だしー」

「叶恵ちゃんほっそいもんね〜。」


 遠くに聞こえていたざわめきが、再び騒がしく聞こえ始めて、私はデカ盛メニュー画像を見せようとスマホをタップしていく。


「つうか叶恵ちゃんさあ。よければ連絡先交換しない?」


 ふとスマホから五智川さんを見れば、テーブルに肘をつきゆるく口角を上げている。


 ああこの人、今の話しの持っていき方とその余裕な表情から察するに、女に慣れているんだなと理解する。


「……いいよ。」


 私がメッセージのアカウント読取QR画面をゆっくり開いて、スマホを差し出した。


 昔ならなんの疑いもなく連絡先を交換していたけれど、大人になって一瞬身構えることを覚えてしまった。セフレ扱いされるんじゃないかとか、悪用されるんじゃないかとか。


 あ、セフレ扱いしてる人、斜め前にいるわ。





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