星を拾う指先が、温かくなるまで
 女性は急ぎ少女を抱きしめると、髪を整えるように優しく撫で、ショールを頭から包み込むように巻いてあげる。
 
 少女の赤切れた指先に気づくと、両手を添え自身の頬に当てて、再び涙を流していた。

 その日の夜も、少女は海に行き「死に落ちる星」を拾い集めていた。
 墨汁のような色に海は染まると、綿雪がまた降り始める。

 幽霊船は再び訪れ、白い服を着た船長は、ゆっくりと気取るようにタラップを歩き降りる。
 少女が籠いっぱいの星を渡すと、再び首を傾げ、昨日同様に胸元の黒い薔薇を手渡していた。

 少女はその場に崩れ落ち、声を上げず泣きじゃくった。
 遠ざかる幽霊船。

 僕は、迷わず強風となった。
 彼女の絶望を背に受け、その甲板へと躍り出たんだ。

 横に揺れ動く幽霊船。船長を含め乗組員は、風である僕に気づき、荒れる波に戸惑うように甲板に手をつき僕を見ていた。
 あれほど身だしなみを気にした船長だったが、ジャケットを汚しながら這いつくばっている。

 僕は怒り船長に声をかけた。

「僕は風だ。この船だって沈めることは容易いぞ。少女に渡した黒バラ何だ 。その星は一体、何なんだ」

 彼の声は、耳ではなく、僕の魂の深い場所に直接響いてきた。
 古い骨が軋むような、遠い昔に忘れてきた自分の記憶が呼びかけるような響きだった。

「少女に渡したのは希望の花。受け取ったのは君と同じ淋しい抜け殻」
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