星を拾う指先が、温かくなるまで
「希望の花? あんな黒い花が希望だって」

「希望の花は見つめた者の心を色を表している。死に落ちた星は君そのものだ」

「何を言っている。僕は風だ……自由な、風のはずだ」

「違う。きみは風じゃない。君は帰る場所を失った、彷徨う人間だ」

 船長の言葉に、僕の風は一瞬、凪いだ(止まった)。
 吹き荒れていた怒りが、凍りつくような恐怖に変わっていく。

 あの花が少女の心を映す鏡だというのなら、なぜ風である僕が、これほどまでに彼女に惹きつけられるのか。その答えが、僕にはまだ、わからなかった。

 荒れ狂う波は治まり、船員たちは僕のことを見つめていた。
 少女のもとへ向かいながら僕は、風になる前の自分を思い出していた。

 僕は自ら選んでしまったのだ。繋がりを絶ち、あの高い場所から飛び降りることを。
 誰かが反省し、世界が少しは変わると思っていた。

 だが、空から覗き見た世界は、昨日と何一つ変わっていなかった。
 僕という反論者が消えた分、あいつらの言葉はより自由で、より残酷に響くだけ。


「……なんだ、損したな」


 僕の命の値段は、あいつらの午後の暇つぶし。僕が消えた後の教室の笑い声。軽く語られる僕の名前。
 ほんの一瞬。風が運び耳にする。その程度の価値しかなかったのだ。
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