絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第一話】: 日常の皮を剥ぐ 4

​「……っ、これ……何……?」

​放心状態のまま、ひとみは吸い寄せられるように男性の股間へと手を伸ばした。

ガウンの隙間から露わになった、怒張した熱い塊。

それを握りしめた瞬間、ひとみの指先に、到底人間とは思えない無機質な凹凸が伝わった。

​ゴツゴツとした、硬い突起の感触。

それは、亀頭の周囲に円を描くように埋め込まれた、12個のシリコンボール――通称「真珠」だった。

​「……気づいたかい? これが君を、もっと深い場所まで連れて行ってくれるんだよ」

​男性が低く笑う。

ひとみはトロンとした、焦点の定まらない眼差しでその異様な逸物を見つめた。

普通なら嫌悪感を抱くはずの「改造」の痕跡。

だが、今のひとみにとっては、自分を内側からズタズタに壊してくれる「極上の玩具」にしか見えなかった。

​「……あ、……ぁ……っ」

​ひとみは震える手で、その硬い突起のひとつひとつを確かめるように、ゆっくりとシゴき始めた。

シリコンの隆起が掌を擦るたびに、想像するだけで下腹部がキュンと鳴り、蜜が溢れ出す。

​欲しい。

これで、中を掻き回されたい。

​ひとみは上目遣いで男性を見上げ、半開きになった唇から銀色の糸を引かせながら、掠れた声で懇願した。

​「……おねがい、……入れて……ください。それ……欲しいの……っ」

​幕張の自宅で誠司に抱かれる時、一度だって口にしたことのない卑猥な言葉。

佐藤に弱みを握られた時に、必死で飲み込んだ屈辱の言葉。

それが今、上野の密室で、自分から溢れ出していた。

​「……いいだろう。その代わり、この部屋の外にいる連中にも、君の鳴き声を聞かせてあげるんだよ」

​男性がひとみの腰を抱き寄せ、その「真珠」の埋め込まれた凶器を、溢れんばかりの蜜で濡れた彼女の入り口へと押し当てた。

ひとみは期待と恐怖に身を震わせ、自分からその異物を迎え入れるように腰を突き出した。
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