甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
涙で想いを馳せて
次の週末。
左京は桜子を連れて、古くからつき合いのある呉服屋を訪れた。
「まあ、ようこそお越しくださいました。さあ、どうぞ奥のお座敷へ」
上品な物腰の50代の女性スタッフが、桜湯と和菓子でもてなしてくれる。
「左京ぼっちゃまもご立派になられて、こんなに可愛らしいお嫁様を連れて来てくださるなんて。本当に感無量ですわ」
「初めまして、桜子と申します」
桜子は三つ指をついて挨拶した。
「こちらこそ、お初にお目にかかります。この呉服屋の跡取り、雅子と申します。どうぞお見知りおきを」
「雅子さんですね、お世話になります」
「まあまあ、本当に素晴らしいお嬢様ね。奥様もさぞかし喜ばれたでしょうに……」
そう言うと雅子は、目尻に浮かんだ涙を指先で拭う。
「ごめんなさいね、年を取ると涙もろくなってしまって。さあ、では桜子様。早速反物をご覧くださいな」
雅子は気を乗り直して笑顔になると、奥座敷に繋がるふすまを開けた。
「こちらの反物はいかがでしょう?」
そう言って雅子が広げた薄桃色の反物に、桜子は思わず息を呑む。
「なんて美しいの……」
うっとりと見惚れてから尋ねた。
「これは、正絹でしょうか?」
「ええ。美しい光沢としっとりとした艶やかさの、最高級のものです」
「色もとてもきれい……。この桜の柄は、京友禅ですね?」
「左様でございます。この淡い上品な桜色は、一斤染と申しまして、一斤の紅花より染め上げた日本古来の伝統色ですわ。左京様から、桜の柄の最高級の着物を奥様に、とお聞きしてご用意いたしました」
え?と桜子は左京を振り返る。
左京は微笑んで桜子に頷いてみせた。
「桜子様、こちらの反物で色留袖をあつらえてよろしいですか?」
「あの、こんなに素晴らしいものを、私が……?」
「もちろんです。ねえ、左京様」
すると左京は立ち上がり、桜子のそばまでやって来る。
「桜子、気に入った?」
「気に入るもなにも、こんなに美しい反物は見たことがありせん」
「それならこれにしよう。桜子によく似合うと思う」
「でも、本当にいいのでしょうか?」
「ああ。俺が君にこれを贈りたいんだ。見せてほしい、この着物を着た桜子の姿を」
「はい。ありがとうございます、左京さん」
目を潤ませる桜子に、左京も優しく笑った。
左京は桜子を連れて、古くからつき合いのある呉服屋を訪れた。
「まあ、ようこそお越しくださいました。さあ、どうぞ奥のお座敷へ」
上品な物腰の50代の女性スタッフが、桜湯と和菓子でもてなしてくれる。
「左京ぼっちゃまもご立派になられて、こんなに可愛らしいお嫁様を連れて来てくださるなんて。本当に感無量ですわ」
「初めまして、桜子と申します」
桜子は三つ指をついて挨拶した。
「こちらこそ、お初にお目にかかります。この呉服屋の跡取り、雅子と申します。どうぞお見知りおきを」
「雅子さんですね、お世話になります」
「まあまあ、本当に素晴らしいお嬢様ね。奥様もさぞかし喜ばれたでしょうに……」
そう言うと雅子は、目尻に浮かんだ涙を指先で拭う。
「ごめんなさいね、年を取ると涙もろくなってしまって。さあ、では桜子様。早速反物をご覧くださいな」
雅子は気を乗り直して笑顔になると、奥座敷に繋がるふすまを開けた。
「こちらの反物はいかがでしょう?」
そう言って雅子が広げた薄桃色の反物に、桜子は思わず息を呑む。
「なんて美しいの……」
うっとりと見惚れてから尋ねた。
「これは、正絹でしょうか?」
「ええ。美しい光沢としっとりとした艶やかさの、最高級のものです」
「色もとてもきれい……。この桜の柄は、京友禅ですね?」
「左様でございます。この淡い上品な桜色は、一斤染と申しまして、一斤の紅花より染め上げた日本古来の伝統色ですわ。左京様から、桜の柄の最高級の着物を奥様に、とお聞きしてご用意いたしました」
え?と桜子は左京を振り返る。
左京は微笑んで桜子に頷いてみせた。
「桜子様、こちらの反物で色留袖をあつらえてよろしいですか?」
「あの、こんなに素晴らしいものを、私が……?」
「もちろんです。ねえ、左京様」
すると左京は立ち上がり、桜子のそばまでやって来る。
「桜子、気に入った?」
「気に入るもなにも、こんなに美しい反物は見たことがありせん」
「それならこれにしよう。桜子によく似合うと思う」
「でも、本当にいいのでしょうか?」
「ああ。俺が君にこれを贈りたいんだ。見せてほしい、この着物を着た桜子の姿を」
「はい。ありがとうございます、左京さん」
目を潤ませる桜子に、左京も優しく笑った。