甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
時間になり、指定された円卓に着くと、梶原不動産の社長がステージに上がって挨拶する。

皆で乾杯したあとは、しばらく食事の時間になった。

和洋折衷の料理に、桜子は目を輝かせる。

「この魚介の冷製カクテル、とても美味しいです。帆立や甘海老の上に散らしてあるジュレ、カツオと昆布と鶏のコンソメを合わせてあるのだわ。宝石みたいにキラキラしてきれい」

うっとりする桜子に、左京の父が笑い出した。

「さすがは料亭の若女将だね。隠し味も言い当ててしまう」
「でもこの味わいは、私では到底作れません」
「そうかい? 桜子ちゃんなら作れるよ。戸部も大絶賛していたからね。結婚っていいですねぇと、しみじみ語っていた」

あいつめー、と左京が小さく呟く声が聞こえて、桜子は取り繕う。

「あの、左京さん。お食事が終わったら、皆様のテーブルをご挨拶に回ってもいいですか?」
「ああ、そうだな」

それを聞いて、左京の父が目を細めた。

「本当にいいお嫁さんが来てくれたもんだ。左京、桜子ちゃんを必ず幸せにするのだぞ?」

あの、お義父様、と桜子が口を開こうとすると、左京が「はい、必ず」と真剣に頷く。

(え、そんな。恋愛感情のない、価値観で割り切った結婚なのに)

それでも左京は、こんなふうに自分に優しく接してくれる。

幸せな夫婦を演じてくれる。

そこに愛などないにもかかわらず。

(それなら私も、左京さんに優しさをお返ししたい。こんな私でも、少しは左京さんを幸せに出来れば……。その為に、私は左京さんに心を尽くそう)

桜子は密かにそう心に誓った。
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