甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
羽田空港からは、まずロサンゼルスへと向かう。

西海岸に1週間ほど滞在したあと、ハブ空港のデンバーを経由してコロラド州のアスペンへ移動し、更にそこからワシントン州のアッシュフォードに向かう予定だった。

「左京さん、ここが飛行機の中だなんて信じられないです」

ゆったりしたファーストクラスの席に座り、早速シャンパンを振る舞われて、桜子は夢見心地で呟く。

「虹の彼方に行っちゃいそう……」
「ははっ、桜子はロマンチストだな」
「だって本当に夢の世界にいるみたいで。わくわくして眠れそうにないです」
「桜子が眠れない? それは大変だ」
「エコノミーの座席ならすぐ眠れるんですけどね」
「逆に!?」

いつもなら味気ない単なる移動の時間が、桜子と一緒ならこんなにも新鮮に感じるとは。

左京はパソコン作業の仕事もほどほどに、桜子との会話を楽しんだ。

「左京さん、見てベッド! 飛行機の中なのに、ホテルみたい」

担当のキャビンアテンダントがフルフラットのベッドメイキングをしてくれると、桜子は両手で頬を押さえて目を見開いた。

「なんてこと……。こんな快適なベッド、寝てる間に着いちゃうわ」
「ん? それだと困るのか?」
「困ります。だってせっかくの空の旅が、あっという間に終わっちゃうもん」

子どものように困り果てた表情の桜子に、左京は笑い出す。

「それなら、これからもたくさん飛行機で旅しよう」
「左京さんと?」
「ああ」
「わぁ、嬉しい!」

無邪気な笑顔を浮かべると、桜子は早速ベッドに横になった。

「左京さんは? まだ寝ないんですか?」
「ん? もう少ししたら寝るよ」
「そう。あの、じゃあ、寝るまででいいんですけど……」

桜子は言いにくそうに、そっと左京を上目遣いに見る。

「どうした?」
「うん、あの、手を繋いでも……いい?」

え?と思わず聞き返してから、左京は微笑んで頷いた。

「いいよ」

そう言って手を伸ばすと、桜子も嬉しそうに手を差し出す。

繋いだ右手をキュッと握り、左京は優しく左手で桜子の頭をなでた。

「おやすみ、桜子」
「おやすみなさい、左京さん。空の上で寝るなんて不思議な気分。眠れるかな?」
「桜子が眠るまで手を握ってるから、安心して目を閉じて」
「はい、ありがとうございます」

にこっと笑ってから目を閉じた桜子は、そのままスーッと眠りに落ちる。

そんな桜子に頬を緩めてから、左京はしばらく手を繋いだままでいた。
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