甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
ようやく気持ちが落ち着くと、左京もスーツに着替え、ショールを肩に掛けた桜子とオペラハウスでコンサートを楽しむ。

夜はホテルのレストランで、ピアノの生演奏を聴きながらディナーを味わった。

照明が絞られた店内は、大人たちの夜を魅惑的に彩り、キャンドルの明かりが左京の瞳を揺らして照らす。

桜子は、大人の男の色気を漂わせる左京に胸がドキドキした。

部屋に戻る時も、左京は桜子のウエストをグッと抱き寄せ、その大きな手をドレス越しに感じて、恥ずかしさにうつむく。

「桜子……」

部屋に入るなり、左京は桜子を壁に押し付けて唇を奪った。

「ん、待って、左京さ……」

明らかにいつもと違う熱量。
息もつかせぬキスの雨に、桜子は思わず吐息をもらす。

すると、更に深く左京が口づけてきた。

「だめ、もう……、左京さ……んっ」

止めたいのに力が入らず、声に出すも甘い口調になる。

キスが耳元から首筋へと下りて、桜子がゾクッと身体を震わせた時だった。

左京のジャケットの内ポケットで、スマートフォンがバイブで震える。

ハッと我に返った左京は、桜子を抱いていた腕を解き、スマートフォンを取り出した。

「門倉か、お疲れ様」

ようやくいつもの左京に戻り、桜子はホッと胸をなで下ろす。

すると「ちょっと待て」と門倉に断ってから、左京が桜子を振り返った。

「桜子、先にベッドで休んでて。俺はオンラインミーティングがあるから」
「でも……」

桜子が戸惑いながら見つめると、左京は桜子の頭に手を置いて顔を覗き込んだ。

「いい子だから先に寝てな」
「……はい」

左京は微笑んで頷くと、「おやすみ、桜子」とささやく。

「おやすみなさい、左京さん」

寂しさを覚えながら、桜子は左京を残して寝室に向かった。
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