甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
大切にこの手で
次の日、二人はホテルをチェックアウトすると、ワシントン州のアッシュフォードを目指す。
「直行便がないから、もう一度デンバーに戻って乗り継ぎする。シアトルの空港に着くのは7時間後かな。そこからアッシュフォードまでは、車で2時間ほどかかる。今日は1日移動で終わるな」
「そうですね。でも空の旅は楽しいから苦じゃないです」
飛行機の窓から、デンバー上空ではロッキー山脈の美しい山の連なりが、そしてシアトルのタコマ空港が近づくと、周囲を圧倒するマウント・レーニアを見下ろせた。
「なんてきれいな山なの」
「そうだな。標高4,392mで裾野が広く美しい円錐形をしている。日本の富士山に似ているから、『タコマ富士』とも呼ばれているんだ。かつての日本人移民たちが、故郷を思って名付けたらしい」
「そうなのですね。そんなところも日本との繋がりを感じます。橘の旅館を建てるのにふさわしい場所ですね」
「ああ、確かに」
空港に着くとレンタカーで4WDを借り、左京がハンドルを握った。
「桜子、疲れてるだろうから寝てな」
「ううん、大丈夫。景色もきれいですね」
アスペンとはまた違い、徐々に原生林へと入っていくと、大自然の中にポツリと紛れ込んだような感覚になる。
宿泊先のコテージ風のホテルに着くと、先に到着していた門倉たちが出迎えた。
「常務、奥様、お疲れ様でした。チェックインは済ませてありますので、お部屋へどうぞ。ゆっくり身体を休めてくださいね」
「ありがとうございます、門倉さん」
都会の高級ホテルとは違うが、ログハウスのような風情は自然を感じられて、この地に滞在する気分を高めてくれる。
「暖炉もあって、気持ちが落ち着きますね」
「ああ。夕食はルームサービスにするか?」
「はい、ありがとうございます」
窓の外に静かに降り積もる雪を見ながら、二人で美味しいシチューを味わうと、桜子は部屋の暖かさと旅の疲れからか、目をトロンとさせた。
「桜子? 眠そうだな。風呂に入ったらもう寝なさい」
「……左京さんは?」
「明日からの視察に合わせて、資料をまとめておきたいんだ。ごめん、このホテルはスイートルームがないから部屋が分かれてなくて。なるべく起こさないように、明かりを絞って作業する」
「ううん、大丈夫」
桜子はバスルームで身体を温めると、もう限界とばかりにフラフラとベッドに歩み寄る。
「おやすみ、桜子」
「おやすみなさい、左京さん」
そっと頬に口づけると、桜子は幸せそうに微笑んでそのまま眠りについた。
「直行便がないから、もう一度デンバーに戻って乗り継ぎする。シアトルの空港に着くのは7時間後かな。そこからアッシュフォードまでは、車で2時間ほどかかる。今日は1日移動で終わるな」
「そうですね。でも空の旅は楽しいから苦じゃないです」
飛行機の窓から、デンバー上空ではロッキー山脈の美しい山の連なりが、そしてシアトルのタコマ空港が近づくと、周囲を圧倒するマウント・レーニアを見下ろせた。
「なんてきれいな山なの」
「そうだな。標高4,392mで裾野が広く美しい円錐形をしている。日本の富士山に似ているから、『タコマ富士』とも呼ばれているんだ。かつての日本人移民たちが、故郷を思って名付けたらしい」
「そうなのですね。そんなところも日本との繋がりを感じます。橘の旅館を建てるのにふさわしい場所ですね」
「ああ、確かに」
空港に着くとレンタカーで4WDを借り、左京がハンドルを握った。
「桜子、疲れてるだろうから寝てな」
「ううん、大丈夫。景色もきれいですね」
アスペンとはまた違い、徐々に原生林へと入っていくと、大自然の中にポツリと紛れ込んだような感覚になる。
宿泊先のコテージ風のホテルに着くと、先に到着していた門倉たちが出迎えた。
「常務、奥様、お疲れ様でした。チェックインは済ませてありますので、お部屋へどうぞ。ゆっくり身体を休めてくださいね」
「ありがとうございます、門倉さん」
都会の高級ホテルとは違うが、ログハウスのような風情は自然を感じられて、この地に滞在する気分を高めてくれる。
「暖炉もあって、気持ちが落ち着きますね」
「ああ。夕食はルームサービスにするか?」
「はい、ありがとうございます」
窓の外に静かに降り積もる雪を見ながら、二人で美味しいシチューを味わうと、桜子は部屋の暖かさと旅の疲れからか、目をトロンとさせた。
「桜子? 眠そうだな。風呂に入ったらもう寝なさい」
「……左京さんは?」
「明日からの視察に合わせて、資料をまとめておきたいんだ。ごめん、このホテルはスイートルームがないから部屋が分かれてなくて。なるべく起こさないように、明かりを絞って作業する」
「ううん、大丈夫」
桜子はバスルームで身体を温めると、もう限界とばかりにフラフラとベッドに歩み寄る。
「おやすみ、桜子」
「おやすみなさい、左京さん」
そっと頬に口づけると、桜子は幸せそうに微笑んでそのまま眠りについた。