甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
ニューヨーク
思いがけず訪れたニューヨーク。
景色は大自然から一気に都会へと様変わりする。
「わっ、オシャレな人ばかり。私、雪ん子みたいなのに」
左京が買った白のロングダウンとニット帽姿の桜子は、空港内を行き交う人に気後れして、左京の背中に隠れた。
「雪ん子桜子も可愛いけど、ニューヨークでたくさんドレスを買おう」
左京はここぞとばかりに、マンハッタンのラグジュアリーなホテルのスイートルームを押さえていた。
「カイルとは明日、ランチミーティングすることになっている。今夜は部屋でゆっくりするか」
「はい」
ルームサービスを頼み、二人で向かい合ってワインで乾杯する。
きらめく夜景をバックにワイングラスを口にする左京は、まるで映画の中の俳優のようで、桜子はぽーっと見惚れた。
「ん? どうした、桜子」
「あ、えっと、左京さんがあまりにかっこ良くて……」
「なに、惚れ直した?」
冗談めかしてニヤリと笑う左京に、桜子は頬を染めて「はい」とうつむく。
「え、ちょっと。桜子こそ、可愛すぎるぞ」
「いえ、そんなこと……」
恥ずかしさのあまり、桜子は顔を上げられなくなった。
二人の間に妙な緊張感が漂う。
「桜子」
「はい」
上目遣いにそっと見上げるのが精一杯の桜子に、左京も真顔になった。
「これは夜景マジックというやつだ。背景のマンハッタンが絵になるのであって、別に俺がかっこいい訳ではない」
「いいえ、違います。私、左京さんにしか目がいかないです。どうしよう、胸がいっぱいでデザートが食べられない」
ええ!?と左京は驚く。
「桜子がデザートを食べられないなんて……」
困ったように呟くと、左京は立ち上がって桜子の手を引き、ソファに座らせた。
「ここにいて。デザートと紅茶を運んでくる」
「はい、ありがとうございます」
ソファに並んで座ると、視界から左京がいなくなったせいか、ようやく気持ちが落ち着いてきた。
本場のニューヨークチーズケーキとバニラビーンズたっぷりのアイスクリームを美味しく味わっていると、隣から愛情混じりの視線を感じて、桜子はまた頬を染める。
なるべく目をそらして食べ終わると、左京は「美味しかった?」と尋ねてきた。
「はい、とっても」
そう言って顔を上げた桜子は、目の前にある左京の眼差しに囚われて息を呑む。
左京はマンハッタンの夜景を思わせるような深い色の瞳でじっと桜子を見つめ、右手で桜子の頬を包むとそっと顔を寄せた。
思わず身を引こうとすると、左京は桜子の首の後ろに手を滑らせてグッと抱き寄せる。
そのまま桜子の顔を上向かせ、唇を熱く奪った。
「……ん」
胸がドキドキと高鳴り、桜子は吐息をもらす。
すると左京が更に深く唇を重ねてきた。
腕の中に抱きしめられ、想いをぶつけるような情熱的なキスに、桜子の頭はクラクラする。
軽いめまいを感じたと思った時には、ソファに押し倒されていた。
「桜子……」
切なげに耳元でささやかれ、桜子の身体がジンとしびれる。
左京はうわ言のように桜子の名を呼びながら、首筋や鎖骨にキスの雨を降らせた。
そのまま胸元に唇が移動し、素肌にチュッと口づけられた刹那、桜子は身体をピクッと小さく跳ねさせる。
とっさに両腕で胸元を隠しながら身をよじると、左京がハッと我に返った。
「……ごめん、大丈夫か?」
気遣うように尋ねられ、桜子はいつもの左京の様子にホッとする。
「はい、大丈夫です。あの、ごめんなさい」
左京を拒絶した訳ではなかったが、恥ずかしさのあまり反射的に身体が動いてしまった。
「左京さん、ごめんなさい。私……」
「謝るな、桜子はなにも悪くない。ごめん、俺が悪かった」
「違うんです! そうじゃなくて。左京さんは大人なのに、私がそれに応えられないのが申し訳なくて……。左京さんのことが大好きなのに、どうして私……」
知らず知らずのうちに涙が込み上げてきて、桜子は必死に指先で拭う。
左京は桜子の身体を抱き起こすと、そっと両腕で抱きしめた。
「こうするのは平気?」
「はい、とても安心します」
「そうか、それなら良かった」
桜子の頭をぽんぽんとなでてから、左京は桜子を胸に抱きしめたまま話し出す。
「桜子、花ってゆっくり開くだろう?」
「え?」
急になんの話かと、桜子は首をかしげて左京を見上げた。
左京は桜子に微笑んでからまた口を開く。
「桜の花だってそうだ。長くて寒い冬を耐え、春の暖かさを感じて安心したように蕾になり、やがてゆっくりと花開く。その姿は誰の目にも美しく映り、人々を魅了してやまない。俺は桜子にも、そんなふうに咲いてほしいんだ。これまでずっと一人でがんばってきた桜子に。俺の腕の中で、安心すると言ってくれる桜子は、柔らかい蕾になったんだ。焦らなくていい。ゆっくりと花びらがほぐれていくように、自然と花開く時が来るよ」
桜子はその言葉を噛みしめながら、じっと左京を見つめた。
「私、左京さんの腕の中にいてもいいの?」
「もちろん。いつだって俺の腕で桜子を温める。桜子が安心して俺に身を委ねられるように」
「はい」
桜子が頷くと、左京は優しく笑ってまた桜子の身体を抱き寄せる。
「左京さん」
「ん? なに」
「私、左京さんと結婚出来て本当に幸せなの。ありがとうございます」
「俺もだよ、桜子」
安心して左京の胸に頬を寄せる桜子の髪をなで、左京はいつまでも柔らかいその身体を抱きしめていた。
景色は大自然から一気に都会へと様変わりする。
「わっ、オシャレな人ばかり。私、雪ん子みたいなのに」
左京が買った白のロングダウンとニット帽姿の桜子は、空港内を行き交う人に気後れして、左京の背中に隠れた。
「雪ん子桜子も可愛いけど、ニューヨークでたくさんドレスを買おう」
左京はここぞとばかりに、マンハッタンのラグジュアリーなホテルのスイートルームを押さえていた。
「カイルとは明日、ランチミーティングすることになっている。今夜は部屋でゆっくりするか」
「はい」
ルームサービスを頼み、二人で向かい合ってワインで乾杯する。
きらめく夜景をバックにワイングラスを口にする左京は、まるで映画の中の俳優のようで、桜子はぽーっと見惚れた。
「ん? どうした、桜子」
「あ、えっと、左京さんがあまりにかっこ良くて……」
「なに、惚れ直した?」
冗談めかしてニヤリと笑う左京に、桜子は頬を染めて「はい」とうつむく。
「え、ちょっと。桜子こそ、可愛すぎるぞ」
「いえ、そんなこと……」
恥ずかしさのあまり、桜子は顔を上げられなくなった。
二人の間に妙な緊張感が漂う。
「桜子」
「はい」
上目遣いにそっと見上げるのが精一杯の桜子に、左京も真顔になった。
「これは夜景マジックというやつだ。背景のマンハッタンが絵になるのであって、別に俺がかっこいい訳ではない」
「いいえ、違います。私、左京さんにしか目がいかないです。どうしよう、胸がいっぱいでデザートが食べられない」
ええ!?と左京は驚く。
「桜子がデザートを食べられないなんて……」
困ったように呟くと、左京は立ち上がって桜子の手を引き、ソファに座らせた。
「ここにいて。デザートと紅茶を運んでくる」
「はい、ありがとうございます」
ソファに並んで座ると、視界から左京がいなくなったせいか、ようやく気持ちが落ち着いてきた。
本場のニューヨークチーズケーキとバニラビーンズたっぷりのアイスクリームを美味しく味わっていると、隣から愛情混じりの視線を感じて、桜子はまた頬を染める。
なるべく目をそらして食べ終わると、左京は「美味しかった?」と尋ねてきた。
「はい、とっても」
そう言って顔を上げた桜子は、目の前にある左京の眼差しに囚われて息を呑む。
左京はマンハッタンの夜景を思わせるような深い色の瞳でじっと桜子を見つめ、右手で桜子の頬を包むとそっと顔を寄せた。
思わず身を引こうとすると、左京は桜子の首の後ろに手を滑らせてグッと抱き寄せる。
そのまま桜子の顔を上向かせ、唇を熱く奪った。
「……ん」
胸がドキドキと高鳴り、桜子は吐息をもらす。
すると左京が更に深く唇を重ねてきた。
腕の中に抱きしめられ、想いをぶつけるような情熱的なキスに、桜子の頭はクラクラする。
軽いめまいを感じたと思った時には、ソファに押し倒されていた。
「桜子……」
切なげに耳元でささやかれ、桜子の身体がジンとしびれる。
左京はうわ言のように桜子の名を呼びながら、首筋や鎖骨にキスの雨を降らせた。
そのまま胸元に唇が移動し、素肌にチュッと口づけられた刹那、桜子は身体をピクッと小さく跳ねさせる。
とっさに両腕で胸元を隠しながら身をよじると、左京がハッと我に返った。
「……ごめん、大丈夫か?」
気遣うように尋ねられ、桜子はいつもの左京の様子にホッとする。
「はい、大丈夫です。あの、ごめんなさい」
左京を拒絶した訳ではなかったが、恥ずかしさのあまり反射的に身体が動いてしまった。
「左京さん、ごめんなさい。私……」
「謝るな、桜子はなにも悪くない。ごめん、俺が悪かった」
「違うんです! そうじゃなくて。左京さんは大人なのに、私がそれに応えられないのが申し訳なくて……。左京さんのことが大好きなのに、どうして私……」
知らず知らずのうちに涙が込み上げてきて、桜子は必死に指先で拭う。
左京は桜子の身体を抱き起こすと、そっと両腕で抱きしめた。
「こうするのは平気?」
「はい、とても安心します」
「そうか、それなら良かった」
桜子の頭をぽんぽんとなでてから、左京は桜子を胸に抱きしめたまま話し出す。
「桜子、花ってゆっくり開くだろう?」
「え?」
急になんの話かと、桜子は首をかしげて左京を見上げた。
左京は桜子に微笑んでからまた口を開く。
「桜の花だってそうだ。長くて寒い冬を耐え、春の暖かさを感じて安心したように蕾になり、やがてゆっくりと花開く。その姿は誰の目にも美しく映り、人々を魅了してやまない。俺は桜子にも、そんなふうに咲いてほしいんだ。これまでずっと一人でがんばってきた桜子に。俺の腕の中で、安心すると言ってくれる桜子は、柔らかい蕾になったんだ。焦らなくていい。ゆっくりと花びらがほぐれていくように、自然と花開く時が来るよ」
桜子はその言葉を噛みしめながら、じっと左京を見つめた。
「私、左京さんの腕の中にいてもいいの?」
「もちろん。いつだって俺の腕で桜子を温める。桜子が安心して俺に身を委ねられるように」
「はい」
桜子が頷くと、左京は優しく笑ってまた桜子の身体を抱き寄せる。
「左京さん」
「ん? なに」
「私、左京さんと結婚出来て本当に幸せなの。ありがとうございます」
「俺もだよ、桜子」
安心して左京の胸に頬を寄せる桜子の髪をなで、左京はいつまでも柔らかいその身体を抱きしめていた。