甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
「おお、なんと可愛らしい!」

午後の面会時間になり、やって来た左京の父は、初孫に会えた感激で頬を緩めっぱなしだった。

「ああ、天国の咲子、見てるか? 孫だぞ、こんなに可愛い孫が生まれて来てくれたぞ」

赤ちゃんを抱いて、感極まったように涙ぐむ。

「桜子ちゃん、本当にありがとう。橘家にこんなにも大きな幸せをくれて」
「こちらこそ。左京さんと結婚させていただいて、本当に感謝しています」
「聞いたか、咲子。なんていいお嫁さんが来てくれたことか」

しみじみ呟く父に、桜子は左京に目配せした。

「ね、左京さん」
「ん、そうだな」

そして改めて二人で切り出す。

「親父、この子の名付け親になってほしい」

え!と父は驚いて目を見張った。

「まさか、私がこの子に? 桜子ちゃん、本気なの?」
「はい。ぜひお義父様につけていただきたいです」
「そんな……」

信じられないとばかりに、父はじっと赤ちゃんを見つめる。

「この子には、のびのびと大きくなってほしい。今は亡き咲子の血も、この子は受け継いでいるんだ。先祖代々、脈々と流れてきた時間の中で、真っ直ぐすくすくと、ただ思うがままに人生を歩んで幸せになってほしい」

それを聞いて左京がふと考え込んだ。

「悠久の時の流れの中で、自分の人生を真っ直ぐたくましく生きる。この子の名前、『悠真』はどうだろう?」
「悠真……。すてき! 左京さん、とってもいい名前だと思います」

桜子が笑顔になると、父も頷く。

「ああ、いい名前だな。悠真、元気に大きくなるんだぞ」

ふあ……とあくびをする悠真に、思わず3人で笑った。
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