オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ
新学期が始まって、まだ一週間しかたっていない今日は、転校するには運がいいタイミングのはずだった。
「水城汐莉です……よろしくお願いします」
手のひらに滲む汗を握りしめて、黒板の前で挨拶をする。
自分でも驚くほど小さな声は、後ろの席の子には届かなかったかもしれない。
「慣れないうちは、声をかけてあげてね」
先生の声に「はあい」とゆるやかな返事が戻ってきた。
指示された席で机の木目を見つめていると、緊張が少し落ち着いた。
お父さんの仕事の都合で転校を繰り返した私は、自己紹介なんて特別な意味を持たないことを知っている。
何を言ったって、最初の数日だけ視線が集まって、しばらくすれば、誰も私のことなんて気にしなくなる。
——きっとまた、ここでも一人なんだ。
「教科書ある?いまは、ここだよ」
親切に声をかけてくれた隣の席の女の子に、私は小さく頭を下げた。
「……ありがとう」
馴染んだってすぐに離れることになる。
だったら別に、必要以上に踏み込む必要ないよ。
そんな悟りっ子の私は、席の周りに集まる新しいクラスメイトたちに、簡単な笑顔を浮かべてそれなりの時間を過ごしていた。
放課後になって教室を出た途端、どっと疲れが肩にのしかかって、いち早く校舎を後にする。
どこにいてもほんのりと潮の香りがするこの町は、まだ知らない景色ばかり。
それでも、ひとりで歩く時間はなんだか心地よかった。
「水城汐莉です……よろしくお願いします」
手のひらに滲む汗を握りしめて、黒板の前で挨拶をする。
自分でも驚くほど小さな声は、後ろの席の子には届かなかったかもしれない。
「慣れないうちは、声をかけてあげてね」
先生の声に「はあい」とゆるやかな返事が戻ってきた。
指示された席で机の木目を見つめていると、緊張が少し落ち着いた。
お父さんの仕事の都合で転校を繰り返した私は、自己紹介なんて特別な意味を持たないことを知っている。
何を言ったって、最初の数日だけ視線が集まって、しばらくすれば、誰も私のことなんて気にしなくなる。
——きっとまた、ここでも一人なんだ。
「教科書ある?いまは、ここだよ」
親切に声をかけてくれた隣の席の女の子に、私は小さく頭を下げた。
「……ありがとう」
馴染んだってすぐに離れることになる。
だったら別に、必要以上に踏み込む必要ないよ。
そんな悟りっ子の私は、席の周りに集まる新しいクラスメイトたちに、簡単な笑顔を浮かべてそれなりの時間を過ごしていた。
放課後になって教室を出た途端、どっと疲れが肩にのしかかって、いち早く校舎を後にする。
どこにいてもほんのりと潮の香りがするこの町は、まだ知らない景色ばかり。
それでも、ひとりで歩く時間はなんだか心地よかった。