オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ
ふと海原くんの視線が、膝の上で開きっぱなしになっていた絵日記へと移った。

青の濃さを変えてグラデーションにした海。
そこに白の波と夕陽の光を描いている途中の一枚。

じっと絵を見つめる彼に、気恥ずかしくなって、私は思わずパタンとノートを閉じる。

「あ……ごめん。絵、うまいんだな」
閉じられたノートに何度か目を瞬きさせ、こちらを見た海原くん。

飾り気のないまっすぐな褒め言葉に、私は無意識に横髪に触れた。

「……ありがとう」
褒められるのはあまり得意じゃないけれど、彼のまっすぐな瞳に素直なお礼がこぼれ落ちた。

「ここ、夕焼けがきれいに見えるんだよ。いいとこ見つけたな」
目を細める彼の横顔をちらりと盗み見る。

「海原くんは、いつも見にくるの?」

彼は夕陽の光を反射させながら、私の方に目を向けた。

その笑顔は、思わず目を逸らしたくなるほど、まぶしかった。

「翼でいいよ。みんなそう呼ぶから。俺も汐莉でいい?」
「え……うん」

名前を呼ばれた瞬間、胸の奥がふわっと熱くなる。

だって、転校ばかりで心を閉ざし気味だった私は、下の名前で呼ばれることなんて、もうずっと、長い間なかったから。
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