アラフォーバツイチ、花ざかり。
ゴールデンウィーク中も、俺たち建築士はクライアントとの打ち合わせや、また別のプロジェクトの設計を進めなければいけない。多くの人々が羽を伸ばす中、俺は普通に会社へ向かったが、仕事が趣味のようなものなので苦ではない。
俺が所属するシンシアホームズの東京支店は、複合ビルの十階にある。フロア全体が木のぬくもりを取り入れたオーセンティックな雰囲気で統一され、打ち合わせスペースや俺たちが設計を行うオフィスも同フロアに入っている。
打ち合わせの前に別の邸宅の平面図の確認をするため、自分のデスクに座りPCで図面ファイルを開いた。
俺たちが請け負うのは、いわゆる豪邸と呼ばれるハイセンスな住宅や別荘。今回作っているもののように図面が複雑だと、現場で施工が始まってから不備や記載漏れが見つかることがあるので、そうならないようしっかりチェックしていく。
集中してPCと向き合っていると、五十代前半の男性支店長が「網坂くん」と声をかけてきた。
「忙しいところ悪いな。俺の知り合いから、設計できないかって相談があったんだけど興味ある? 一棟貸しヴィラの建築」