アラフォーバツイチ、花ざかり。
 ふっと笑いをこぼし、支店長に小さく首を横に振ってみせる。

「今は独立は考えてませんけど、やりたいってなったら応援してくれないんですか」
「するわけないよ! 君は手放したくない優秀な人材なんだから」
「清々しいですね」

 大人げない彼の発言に、つい笑ってしまった。

 そんなにはっきり応援しないと言われると、独立の選択がしづらいだろ。今の職場も業務内容も自分に合っていて充実しているし、その気はないからいいのだが。

 支店長は安心した様子で、「じゃ、打ち合わせの日決まったらよろしくー」と足取り軽くオフィスを出ていった。俺の斜め向かいに座っている後輩の女性も、俺たちのやり取りを聞いていたらしく微笑ましげにしている。

「信頼されてますね~網坂さん。ていうか、ヴィラの話聞いてたら海外行きたくなってきました。モルディブとか」

「ああ、モルディブはいいところだよな。とにかく海が綺麗だし、俺が行った時は夜光虫のおかげで青く光って幻想的だった」

「行ったことあるんですか!? いいなぁ~」

 彼女は羨ましそうにしているが、俺にとっては最高にいい旅だったとは言えないのだ。元妻との新婚旅行で訪れた場所だから。

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