アラフォーバツイチ、花ざかり。
 海もヴィラも、元妻も美しかった。しかし、今となってはその思い出も色褪せてしまっている。

 約十年間ずっと思い返さないようにしていたが、真琴と会って昔の話をするようになってから、苦い結婚生活の記憶がちらちら脳裏をよぎる。

 忘れようとしたってどうしても消せない。どんなに苦しい思い出でも、俺の人生の一部なのだから。



 ──四歳年下の俺の元妻・藍奈(あいな)は、シンシアホームズ本社の受付で働いていた。当時は俺も本社で経験を積んでいる最中で、彼女の顔は知っていた。

 急接近したのは、俺の同僚が企画した飲み会。席が隣になって、おっとりした雰囲気や話し方、可憐な花のような笑顔が癒される子だなと感じていた。

 そんな彼女が、会を終える頃にとても不安そうな様子で俺に相談してきたのだ。『最近、誰かにつけられてるような気がするんです』と。

 ストーカーされている可能性があると知って、なにもしないわけにはいかない。その日は一緒にタクシーに乗り、ひとり暮らししている彼女の自宅まで送り届けたのだった。

 それから彼女を気にかけるようになり、恋人のフリをしてしばらく一緒に帰るというベタな方法を取っているうちに、自然に恋愛感情が生まれた。

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